コンサート内容をご紹介します♪

2022年5月22日(日) 14:00(13:30開演) リーデンローズ大ホール
ローズ・コンサート 神戸市室内管弦楽団 with 郷古廉

誰が聴いても、「いい曲だな」「素敵!」「綺麗!」と感じるのに、あまり演奏されない作品が有ります。室内オーケストラのための多くの作品もその中の一つで、質の高い演奏にはかなりのアンサンブル力と指揮者の見識が必要です。一般的には迫力の有るフル編成のオーケストラ作品の方が好まれる上、優れた室内オーケストラの数が限られているため、中々演奏会で聴く機会がありません。

神戸室内管弦楽団は、1981年に神戸市によって地方自治体初の弦楽合奏団として発足しました。1998年より2012年まで旧東ドイツの著名なヴァイオリニスト&指揮者のゲルハルト・ボッセが首席指揮者(後に音楽監督)を務め、2018年に管楽器を加え神戸市室内管弦楽団と改名。2021年よりバロック・チェロ、指揮、執筆、録音ディレクターなど多岐に亘って活躍している鈴木秀美を音楽監督に迎え大変高い評価を得ています。

ヴァイオリン協奏曲で良く知られているメンデルスゾーンは19世紀のドイツで裕福な家庭に生まれました。その「神童」ぶりがゲーテを驚嘆させ、早くから演奏活動や作曲を行っただけでなく、多数の芸術家と交流し、多言語を操り活躍しました。ライプツィヒ音楽院を設立したり、忘れ去られていたバッハの名作「マタイ受難曲」を自らの指揮で蘇演させるなど偉業を成し遂げましたが、38歳という若さで急死しています。12歳から14歳にかけて13曲の弦楽のための交響曲(シンフォニア)を作曲。演奏会ではこの中から第7番が演奏されます。メンデルスゾーンの早熟な天才ぶりが良く分かる作品です。

郷古廉をソリストに迎え演奏するのはモーツァルトの有名なヴァイオリン協奏曲第5番です。天才モーツァルトの音楽は“熟考を重ね苦労して作り出したものではなく、天から降ってきた様だ”、“演奏するのがそれほど難しくなさそうに思えて非常に難しい”、と言われます。19歳の時に書かれたこのヴァイオリン協奏曲は、第3楽章の途中で当時ヨーロッパで流行っていたトルコ風と言われる異国調の音楽が突然始まるため、「トルコ風」と呼ばれています。ヴァイオリン協奏曲の中で最も人気の有る作品の一つです。ウィーンで研鑽を積んでいる郷古廉がオーストリアの天才音楽家の作品をどの様に聴かせてくれるか?楽しみです。

演奏会の最後を飾るのは“交響曲の父”、“弦楽四重奏曲の父”と呼ばれている18世紀のオーストリアの作曲家J. ハイドンの交響曲2曲です。モーツァルトとも親交の有ったハイドンの作品は、聴けばどれも素晴らしいのですが、なにしろあまりにも多作で(100曲以上の交響曲、編曲物など除いても70曲近くの弦楽四重奏曲)、そのごく一部しか演奏会で聴く機会が有りません。ハンガリーの大貴族エステルハージ家の楽長を長く務めたハイドンは、その庇護の下第28番、第45番を含む多数の交響曲や作品を作曲しました。ハイドン率いる楽団は、エステルハージ家の侯爵が夏の休暇を離宮で過ごすのに同行していました。ある年の滞在が例年より長引く中、作曲されたのが「告別」と言われています。最終楽章で、演奏中に楽団員が一人、二人と減っていくという演出で、家に帰りたい楽団員の気持ちを代弁し、その気持ちを察した侯爵は翌日楽団に休暇を与えた、と言われている作品で、聴いて面白いだけでなく、視覚的にも大変面白い作品です。

福山でこれらの作品が演奏される機会は稀ですので、是非この機会をお見逃しなく!

 

2022年5月20日(金)19:00(18:30開場) リーデンローズ大ホール
前夜祭コンサート

2022年のばらのまち福山国際音楽祭の前夜祭を飾るのは、2013年神戸国際フルート・コンクールで1位を受賞したフランスのマチルド・カルデリーニと音楽祭のために結成されたフェスティバル・ストリング・オーケストラ。

オープニングに演奏されるのは、モーツァルトの最も有名な作品の一つ、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(セレナード第13番)。モーツァルト自身によって記されたドイツ語のタイトルは、“小さな夜の曲”という意味。クラシック音楽を聴かれたことの無い方でもどこかで耳にされたことが有るという位、CMやゲームのBGMなどでも使われている作品です。

2曲目からはカルデリーニが加わっての演奏になります。ヴィヴァルディの「海の嵐」は、ヴェネツィアの海の嵐の情景を描写した作品と言われ、音楽史上初のフルート協奏曲全6曲の中の一つ。3楽章から成る作品で、フルートの様々な技巧が堪能出来る作品です。

続いて、アルゼンチンの生んだ20世紀の偉大な作曲家・バンドネオン奏者のピアソラの名曲が2曲演奏されます。踊りのための音楽だったタンゴにクラシックやジャズの要素を融合させ、タンゴ革命を起こしたピアソラは、保守的なタンゴ・ファンから攻撃されながら世界的に絶大なる人気を誇り、様々な楽団を結成し、数々の作品を作曲しました。「リベルタンゴ」は“自由なタンゴ”、「オブリビオン」は“忘却”という意味です。ピアソラの作品はクラシック音楽の分野でも様々な楽器で演奏されています。今回はフルートとアンサンブルでの演奏。聴く人々を魅了するピアソラの代表的な作品をお楽しみください。

続いて演奏されるモーツァルトのフルートと管弦楽のためのアンダンテは、いかにもモーツァルトらしい美しい旋律が印象的な作品で、フルートとピアノでアンコール・ピースとして演奏されることも有る曲です。

最後に演奏されるJ.S.バッハの管弦楽組曲第2番は、バッハが作曲した4つの管弦楽組曲の中で最も演奏される作品の中の一曲。実質フルート協奏曲とも言える作品で、7つの曲で成り立っており、最後の「バディネリ」は大変有名です。

暖かい春の一日。心の中まで温まる様な名曲に彩られた前夜祭をお楽しみ頂ければ幸いです。

 

2022年5月21日(土)11:00 (10:30開場) リーデンローズ大ホール
オープニング・ガラ・コンサート

海外からの渡航規制により、団体の入国が不可能になっている現状下、今年の音楽祭では兵庫芸術文化センター管弦楽団(通称: PACオーケストラ)がオープニングとフィナーレを飾ります。阪神・淡路大震災からの復興のシンボルとして2005年にオープンした兵庫県立芸術文化センターは西日本の重要な文化拠点の一つ。全世界への公募・オーディションによって選ばれた35歳以下のメンバーを中心としたPACオーケストラはこのホールを拠点に全国で公演を行っています。

メンバーは最長3年の在籍期間は兵庫県内に居住し、世界一流の指揮者・ソリスト達と共演しています。四方恭子(元ケルン放響(現・WDR響)第1コンサートマスター、都響ソロ・コンサートマスター)、田野倉雅秋(日本フィル・コンサートマスター)、豊嶋泰嗣(新日本フィル・桂冠名誉コンサートマスター、九響・桂冠コンサートマスター、京響・特別名誉友情コンサートマスター)が交代でコンサートマスターを務め、若々しくエネルギッシュな演奏を聴かせてくれます。今回はNHK交響楽団のアシスタントコンダクターも務めたレジデント・コンダクター岩村力が指揮者を務め、様々なゲストと華やかな演奏会を行います。

今年の福山城築城400年を祝し、喜多流大島能楽堂による新作能「福山」で始まる公演。G線上のアリア、モーツァルトのフルートとハープのための協奏曲、モルダウなど、年齢・性別を問わずどなたにでも楽しんで頂ける名曲の数々を総合プロデューサー池辺晋一郎(作曲家)のナビゲーションでお届けします。様々なスタイルの名曲を、気軽に楽しんで頂ける演奏会です。

 

2022年5月21日(土) 16:30 (16:00開場) リーデンローズ小ホール
郷古廉アンサンブル・コンサート

昨年7月、リーデンローズ大ホールで外山雄三指揮大阪交響楽団の演奏会でチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のソリストを務め、その品の有る名演が絶賛された郷古廉によるアンサンブル・コンサート。

2004年第58回全日本学生音楽コンクール全国大会第1位。06年第11回ユーディ・メニューイン青少年国際ヴァイオリンコンクールジュニア部門第1位。13年ティボール・ヴァルガ・シオン国際ヴァイオリン・コンクール優勝、併せて聴衆賞・現代曲賞を受賞した郷古廉は、現在最も活躍しているヴァイオリニストの一人。オーストリアのウィーンで研鑽を積みながら、各国での演奏会に出演しています。また、ソリストとしての活動に加え、室内楽やオーケストラなどヴァイオリニストにとって重要なレパートリーや演奏形態に次々と積極的に取り組んでいます。

オーストリアの作曲家シューベルトは31歳で病死しましたが、当日演奏される八重奏曲は、27歳の時に書かれました。“歌曲王”として知られるシューベルトらしく、抒情的な旋律も有りながら、弦楽器に木管楽器が加わった、まるで小さなオーケストラの様な編成で、演奏が大変難しい作品です。第一ヴァイオリンのパートは技巧的に非常に難しいだけでなく、まるでコンサートマスターの様にリードしていかなければなりません。弦楽器と木管楽器の音のバランスやリズム、音色が上手く溶け合う様に、それぞれの楽器がお互いを聴きあっていかなければならない難しさも有ります。

様々な経験を積んで成長し続けている郷古廉がこの演奏会のために選んだ信頼する仲間たちとどの様な演奏を届けてくれるか?それぞれの楽器にソロ・パートも有るため、聴きどころに満ちた演奏会です。

 

2022年5月21日(土)18:30(開場: 18:00) リーデンローズ大ホール
バリー・ダグラス ピアノ・リサイタル

1960年、北アイルランドに生まれたバリー・ダグラスは、1986年、まだロシアがソヴィエト連邦だった時代のチャイコフスキー国際コンクール・ピアノ部門で、西側ピアニストとしてはヴァン・クライバーン以来の優勝者となり、一躍名声を確立しました。国際的に活躍する傍ら、1999年には南北アイルランド出身の演奏家で構成された室内合奏団「カメラータ・アイルランドを」結成し、芸術監督を務めています。また、近年では指揮者(弾き振り)としての評価も高まり、円熟した上品な演奏が絶賛を博しています。

今回演奏されるプログラムはドイツ、オーストリアとロシアの作曲家の有名なピアノ作品で構成されています。

シューベルトが晩年に書いた4つの即興曲の第一番から始まる演奏会。美しく、しかしどこか寂しげな旋律の主題が自由に変奏されていく作品です。

20世紀の大作曲家の一人、プロコフィエフはロシアに生まれ、作曲家・ピアニスト・指揮者として活躍しました。アメリカへ亡命の途中来日。西洋の大作曲家の初日本、と当時話題になりました。シェイクスピアの有名な悲劇「ロメオとジュリエット」に基づきバレエ音楽を作曲。後にプロコフィエフ自身により管弦楽組曲3曲とピアノ独奏用(「10の小品」)に編曲されており、10の小品は作曲年にプロコフィエフ自身により初演されています。是非ロメオとジュリエットのお話を頭に描きながらお聴きください。

幼少期よりアルコール中毒の父親から音楽のスパルタ教育を受けて育ったベートーヴェン。若くしてピアニストとして大成功を収めながら、20代で聴覚を失い始め、30代初めに遺書を書くも、自身の芸術のために自殺は思いとどまり作曲を続けました。「熱情」はその様な人生の中期に書かれた、ベートーヴェンの最高傑作の一つで、第8番「悲愴」、第14番「月光」と共にベートーヴェンの三大ピアノ・ソナタと呼ばれています。いかにもベートーヴェンらしい音楽で、劇的な情熱や崇高な美しさに満ちた作品です。

数々の名曲やバレエ音楽などで知られるチャイコフスキーは叙情的な旋律で人気の高い作曲家の一人です。文官として働き始め、23歳で法務省を辞め音楽に専念する様になったため、音楽家としては非常に遅い出だしでしたが、オペラ、バレエ、オーケストラ作品やピアノ作品を始めとする多数の作品を残しました。「四季」はロシアの一年の各月を12曲で描写した作品集で、それぞれの曲にロシアの詩人の詩が引用されています。今回はその12曲の中から、5月「白夜」、6月「舟歌」、8月「とり入れ」が演奏されます。「舟歌」は大変有名で、映画で使われたりもしている作品です。

最後に演奏される「展覧会の絵」は「ロシア五人組」作曲家の一人、ムソルグスキーにより作曲されました。ラヴェルによる管弦楽編が非常に有名で、良く演奏されています。

ムソルグスキーが親友だった画家ヴィクトル・ハルトマンの遺作展で見た10枚の絵の印象を音楽にしたもので、プロムナードがそれぞれの絵をつないでいく役割を果たしています。展覧会会場でゆっくり歩きながら様々な絵を見て回る情景を創造しながら聴いてみて下さい。プログレッシブ・ロックやジャズ、シンセサイザーなど様々な人達により演奏されている名曲です。

ピアノがお好きな方もそうでない方も、ピアノの魅力を堪能して頂ける演奏会です。

 

2022年5月22日(日) 16:30(開場: 16:00)
ミロスラフ・セケラ ピアノ・リサイタル

今年のローズアカデミーの講師はチェコのピアニスト、ミロスラフ・セケラです。幼い頃からピアノとヴァイオリンの両方で並外れた才能を示し、9歳の時に映画「アマデウス」の監督ミロシュ・フォアマンの目にとまり、ピアノとヴァイオリンを見事に弾きこなしていた子供時代のモーツァルトにぴったりだと映画に抜擢されました。プラハ音楽院に進学時、ピアノを選択。プラハ芸術大学を首席で卒業。2002年ブラームス国際コンクール他数多くのコンクールで優勝を果たしています。

ソリスト、室内楽奏者としてウィーンのコンツェルトハウス及び楽友協会ホール、ワシントンのケネディセンター、東京オペラシティコンサートホールなど世界中の著名ホールで演奏し、演奏活動の傍ら各地でマスタークラスも行っています。

22日のリサイタルではハイドン、ショパン、モーツァルトからリストまで、ピアノの技巧や魅力が発揮出来るプログラムです。

ハイドンは60曲以上のピアノ・ソナタを作曲しましたが、現在演奏会で聴くことの出来る機会は非常に少ないです。今回演奏される第60番は、軽快な第1楽章、気品有る美しさに満ちた第2楽章、軽快でありながらイマジネーションを要する第3楽章という3つの楽章を持つソナタで、ピアノの音色の美しさを実感して頂ける作品です。

ショパンの夜想曲第20番は、ショパンの作品の中で最も愛されている作品の一つです。20歳頃、姉のルドヴィカがショパンの書いたピアノ協奏曲第2番を練習するために作曲されましたが、ショパンの死後に出版されたため、「遺作」と呼ばれています。「戦場のピアニスト」など映画に使用されている作品で、美しく哀しげでロマンチックな旋律が心を打ちます。

ショパンの祖国ポーランドは、隣接する国々による分割と統合の繰り返しの戦争と内乱の歴史で、現在のポーランド共和国になったのは1989年の自由選挙によってでした。若くからピアニストとして活躍していたショパンは、20歳頃広い世界を見るため祖国を離れましたが、ロシア帝国から独立しようとポーランド貴族を中心として起きた蜂起が鎮圧され、二度と祖国に戻ることが出来なくなりました。地図から消えた祖国から亡命したポーランド人の多くがパリに亡命し、ショパンも亡くなるまでパリに居住しました。ポロネーズは、フランス語で「ポーランド風」を意味し、元々ポーランドの舞踊として始まり、ヨーロッパで異国情緒を感じさせる音楽として流行・発展した音楽です。ショパン自ら命名はしませんでしたが、「英雄ポロネーズ」の通称で知られるポロネーズ第6番は、演奏に高度のテクニックを要する作品で、輝かしさと力強さに満ちたショパンの最高傑作の一つとして広く知られている作品です。様々なテレビ・ドラマでも使われているので、耳にされた方も多いのではないでしょうか?

神童として幼少時代からピアノ演奏会や作曲を行ったモーツァルトは、オペラ作曲家として人気を博していたにも関わらず浪費壁も有り、30歳になる頃には借金依頼を頻繁に行う様になっていました。33歳の時、プロイセン王に会うべくポツダムを訪れましたが、王には会えず、宮廷の王室音楽総監督でチェリストのジャン・ピエール・デュポールと会っています。この時デュポールの書いたメヌエットに基づいて作曲されたのが、9つの変奏曲です。美しい和音と透き通った響を持つ旋律が印象的な作品です。

35歳で世を去ったモーツァルトが死の床で作曲を続けたのが「レクイエム」です。「ラクリモーサ(涙の日)」はその8曲目で、モーツァルトの絶筆となりました。弟子によって未完のまま残された作品が完成されています。合唱曲ですが、超絶技巧を持つヴィルトゥオーゾ・ピアニストであり作曲家でもあったフランツ・リストによりピアノ独奏のために編曲されています。

コンソレーション(慰め)はリストが30代後半に作曲した6曲のピアノ作品集で、第3番は最も有名な作品です。情感の籠った美しい作品で、演奏される機会も多いです。

最後を飾るのは、リストがヴェルディの有名な歌劇「リゴレット」の音楽をピアノ独奏用に編曲した作品。オペラの第3幕の四重唱「美しい恋の乙女よ」の編曲で、演奏会の最後に相応しい華やかな作品です。